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『毎月定額、働かせ放題』? 固定残業代制ってどんな制度?①

  • 平田 啓基
  • 労働問題

「近年,従業員から会社に対して残業代の支払いを請求されるケースが多くなっています。そして,多くの会社が実際に残業代の支払いを余儀なくされています。
『うちは毎月残業代として決まった金額を支払っている』という経営者の方はいらっしゃりませんか?経営者の方とお話していると、固定残業代制を毎月定額で労働者を働かせ放題の制度と勘違いしているような印象を受けることがあります。
きちんとした法律のルールに従っていないと,支払っているつもりでも実際には残業代の支払いとして認められないケースがあります。
固定残業代制について弁護士が4回シリーズで解説をお届けします。本稿では,固定残業代とは何か,その意味や導入パターンについて,さらに,固定残業代制による効果について解説致します。
 


 

■目次

 
1 固定残業代制とは?
 
(1)固定残業代制の意味
 
(2)基本給組入型
 
(3)手当型
 
2 固定残業代制の効果
 
(1)固定残業代制の効果は?
 
(2)もし法律のルールに従わない固定残業代制だったら?
 


 

1 固定残業代制とは?

(1)固定残業代制の意味

固定残業代とは,
“一定時間分の時間外労働,休日労働及び深夜労働に対して定額で支払われる割増賃金”
のことをいいます。(厚労省告示)
固定残業代制は,残業代や休日労働の割増賃金を決まった額で支給する制度ですが,後で説明するように“一定時間分”の残業代等でしかないことに注意してください(後記2(1)及び4(2)ご参照)。
また,固定残業代制は,毎月の残業代等を決まった額で支給する制度ですが,絶対に固定額以上の残業代等を支払わなくてよいというわけではありません(後記4(2)及び5(2)ご参照)。
 

(2)基本給組入型

固定残業代制の基本給組入型とは,基本給の中に一定時間分の固定残業代等を含んでおくものです。この基本給組入型にもいくつかのパターンがあります。
例えば,
例①“基本給30万円に固定残業代を含む”
例②“基本給30万円には,1か月30時間分の時間外労働に対する割増賃金を含む”
例③“基本給30万円のうち,6万円は,1か月30時間分の時間外労働に対する割増賃金分とする”
このようにいろいろな記載例がありますが,これらのうち例①は後で説明する法律のルールに従っていないため効力がありません。(後記4(1)ご参照)また,例②についても,実際の運用方法次第では法律のルールに従っていないと判断されるケースもあります(後記4(1))。
 

(3)手当型

固定残業代制の手当型とは,一定時間分の残業代等として一定額の手当を支給するものです。この手当型は,いろいろな名称の手当を残業代等の支払いに充てるものです。
例えば,“営業手当”,“役職手当”,“職務手当”,“固定残業手当”などの名称をつけて,手当型固定残業代制を採用するケースがあります。
固定残業代を手当として支払うのであれば,“固定残業手当”など一見して残業代とわかる名前をつけるべきです。この点も後で詳しく説明します。(後記4(3)ご参照)
 

2 固定残業代制の効果

(1)固定残業代制の効果は?

法律のルールに従った固定残業代制を採用することで,2つの効果が得られます。
① 会社は“一定時間分の”残業代等を支払ったことになります。
これは当たり前のことですが,法律のルールに従った固定残業代制を導入すれば,会社は,あらかじめ決められた時間分の残業代等を支払ったものと認められます。
“一定時間分の”という点に注意してください。よく,『固定残業代制にしているから,固定額残業代等を支払っていない』とおっしゃる経営者の方がいらっしゃいますが,これは明らかな間違いです。固定残業代制は,あくまで“一定時間分の”残業代等を固定額で支払うものであって,『いくら残業させても固定額だけ支払っていればいい』という制度ではありません。
詳しくは次(後記(2))に説明しますが,法律のルールに従わない固定残業代制を運用していると,予想に反して高額な残業代等を支払うはめになるかもしれません。
② 追加の残業代等を計算するときに固定残業代分を差引いて考えることができます。
法律のルールに従った固定残業代制を導入すれば,追加の残業代等を計算するときに,計算の基礎となる給与から固定残業代分を差引いて計算することができます。少しイメージしにくいので,後記3において,具体的な例を使って説明します。
 

(2)もし法律のルールに従わない固定残業代制だったら?

① 残業代等を支払っていないことになります。
法律のルールに従わない固定残業代制は,残業代等の支払いとして認められません。会社は残業代を一切払っていないことになりますので,すでに支払った給与に追加して残業代等を支払わなければいけません。
② 固定残業代の金額も含めて残業代等を計算しなければなりません。
法律のルールに従わない固定残業代制は残業代の支払いとは認められませんので,残業代等を計算するときに,計算の基礎となる給与から固定残業代分を差引くことができません。つまり,残業代等を計算するときの時間単価が高くなります。次の具体例を読んでいただければイメージしやすいと思います。
 

まとめ

以上,固定残業代制の大枠についてご説明しました。次回は,実際に固定残業代制を実施するにあたり,法律のルールに従った場合とそうでない場合の違いを,具体的なケースを用いてご説明します。
ご自身の会社制度についてご不安のある方は,当事務所にお気軽にご相談ください。

 

 

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