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経営者のみなさん,もしかすると,破産手続を避けて,会社の保証債務を整理することができるかもしれません

  • 岩田 啓佑
  • 債務

会社がうまくいっておらず,経営が窮地に陥ってしまったが,経営者個人が会社の債務を保証しており,会社をたたむ決断がなかなかできない・・・。こういったケースにおいて,経営者保証に関するガイドラインを活用することで,経営者個人については破産等を避けて,自宅や一定の財産を残したまま,保証債務の整理ができるかもしれません。今回は,そういった経営者個人の保証債務の整理を可能にする,経営者保証に関するガイドラインについて解説します。
 


 

■目次

 
1 民法改正による「保証」のルールの変更
 
2 経営者個人保証のデメリット
 
3 経営者保証ガイドラインとは
 
4 経営者保証ガイドラインの活用による効果
 
5 まとめ
 


 

1 民法改正による「保証」のルールの変更

2020年4月1日より,2017年5月に成立した「民法の一部を改正する法律」,いわゆる改正民法が施行されます。当事務所でも改正民法の施行に向けて鋭意準備を行っているところです。
改正民法の施行により,たとえば,個人が事業用の借入れを保証する場合には,原則として公証人による保証意思の確認手続が必要になるなど,「保証」に関する民法のルールが大きく変わることになります。もっとも,経営者(取締役等)が会社の債務を保証する場合には,公証人による保証意思確認手続は要求されておらず,従前の民法からの変更はありません。
 

2 経営者個人保証のデメリット

会社を経営されている事業主の皆さんは,銀行から事業資金の融資を受ける際に,借入金について個人として保証人になってほしいと金融機関に求められ,個人保証をしている方も多いことでしょう。
確かに,特に中小企業の場合,経営者による個人保証は,事業を展開する上での資金調達を円滑にするという側面があります。
しかし,一方で,会社の事業資金という大きな金額の借入れを個人で保証するわけですから,借入れを躊躇してしまい,思い切った事業展開ができない,保証後に会社の経営が窮地に陥ってしまった場合に保証人となった経営者が破産等の債務整理手続を余儀なくされる,経営者が破産したことで早期の事業再生が阻害されてしまう,といった中小企業の活力を阻害する面もあり,様々な課題があります。
 

3 経営者保証ガイドラインとは

上記のような経営者の個人保証の課題に対応するべく,平成25年12月,中小企業庁,金融庁の後押しを受け,日本商工会議所と一般社団法人全国銀行協会が事務局となって,「経営者の保証に関するガイドライン」(経営者保証ガイドライン)が策定・公表されました。
経営者保証ガイドラインは,経営者保証に関する中小企業,経営者及び金融機関による対応についての自主的かつ自律的な準則(ルール)であり,保証契約締結時等の対応や保証債務整理時の対応について定められています。
保証契約締結時の対応等としては,①中小企業が経営者保証を提供することなく資金調達を希望する場合に必要な経営状況とそれを踏まえた債権者の対応や,②やむを得ず保証契約を締結する際の保証の必要性等の説明や適切な保証金額の設定に関する債権者の努力義務,③事業承継時等における既存の保証契約の適切な見直し等について,保証債務の整理の際の対応としては,④保証人の手元に残す資産の範囲についての考え方や⑤保証債務の一部履行後に残った保証債務の取り扱いに関する考え方等について規定されています。
 

4 経営者保証ガイドラインの活用による効果

①現状の個人保証を外せる可能性があります
経営者保証ガイドラインを活用することによって,現在会社借入金の保証人になっている場合でも,その保証人から外してもらうよう求めることができる可能性があります。
②経営者の個人保証無しで,新たな借り入れができる可能性があります
また,経営者保証ガイドラインを活用することによって,新たに会社が事業場の借り入れを行う際に,今までのように経営者が個人保証をしなくてもよくなる可能性があります。
③会社が破産や民事再生を行う際に,経営者は破産しなくても済む可能性があります。
また,会社が破産や民事再生等の債務整理手続を行う場合にも,経営者保証ガイドラインを活用することで,経営者の方の破産等を回避できる可能性があります。
通常,経営者が会社債務の保証人となっている場合,会社が借入金を弁済できなければ,その会社債務を経営者が負担せざるを得ません。返済できなければ,経営者は,会社とともに破産等を申し立てなければならなくなってしまいます。ところが,経営者保証ガイドラインを活用することで,たとえば自宅を残したり,破産の場合にお手元に残すことができる財産(原則として99万円までの財産です)を超えて,手元に財産を残すという選択肢があり得るのです。
 

5 まとめ

経営者保証ガイドラインは中小企業の活性化を目的としており,実際,経営者にとって多数のメリットが期待できる仕組みです。ただし,ガイドラインの利用にあたっては,様々な要件があります。
弁護士法人H&パートナーズ企業法務部門では,経営者の立場に立ち,経営の実態に合わせた経営者保証ガイドラインの活用についても様々なご提案を行っています。せっかく制度が施行されても,利用しなければその恩恵を受けることはできません。あくまで,申請した人だけが適用を受けられるからです。経営者保証ガイドラインの活用をご検討の方,経営者の保証債務について整理したい方,ぜひ大阪梅田の弁護士法人H&パートナーズにご相談ください。

 

 

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